記事: ActivityPubはインターネットの救世主か?

Protocol/ActivityPub
概要

分散SNSの誕生15周年 | GNU social JP」で紹介が間に合わなかった、4月末に話題だった「ActivityPub is the next big thing in social networks – The Verge」の記事を紹介します。

以下の投稿で認知しました。

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ぐぬ管 (GNU social JP管理人)|[email protected]
!sns こちらの記事が話題のようです。 ActivityPub is the next big thing in social networks – The Verge
Can ActivityPub save the internet?
Imagine a world without platform lock-in, where no ban or billionaire could take down your social network. That’s what ActivityPub has planned.
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堀正岳 @ Masatake E. Hori (@mehori)
「ActivityPubはネットを救うか?」というタイトルの記事。いいまとめになってる Fediverseの面白さと課題、これからモデレーションが最もコストの高い問題になるだろうことなどがバランスよく書かれている

2008-05-05の分散SNS誕生15周年を控えて、ActivityPubがインターネットを救うのではないかという2023-04-20の考察記事でした。複数の識者への取材をベースにした長文でした。

Can ActivityPub save the internet?

ActivityPubのプロトコルが現在ソーシャルで最もホットな機能になっています。

ここ数か月で多くのIT企業がActivityPubとFediverseと知られるものにリソースを投入しました。具体的にはTumblr/Flipboard/Medium/Moziila/Metaです (MetaのActivityPub対応分散SNSコードネームP92 | GNU social JP)。さらに、WordPressにはActivityPubのプラグインがあります (WordPress.com運営元のAutomatticによるActivityPubプラグインの買収 | GNU social JP)。

ActivityPubを利用したプラットフォームのMastodonはTwitter離脱者の避難所となっています。ただ、IT業界の重役に確認すると、未来はMastodonではなく、拡張されたActivityPubベースのソーシャルプラットフォームだという人が増えています。

ActivityPubはソーシャルネットワークを相互運用可能にし、全てを単一のソーシャルグラフ、コンテンツ共有システムに接続するための技術です。電子メールや昔ながらのWebチャットに似ており、オープンなプロトコルで管理されています。

ただ、ActivityPubは完璧ではなく、やるべきことがあります。また、ソーシャルメディアの再発明のための競争が繰り広げられています。ArtifactやSubstack Notesなどのソーシャルの新興企業は、独自のクローズドプラットフォームを構築しており、Nostr/Bluesky/Farcasterなどソーシャルの分散化を目的とした独自のオープンプロトコルも始まっています。ただ、前述のIT企業で何十年もWebに取り組んできた人々は、分散化を巡る動向をこれまでもみてきたが、今回は違うものになると主張しています。

過去15年間でソーシャルWebは安定した市場になってきました。具体的にはFacebookとInstagramが勝ち、RedditとSnapchatが登場し、TikTokが爆発しました。ただ、代わりに、長い間閉鎖的なプラットフォームにインターネットを使った交流は閉じ込められていました。そして、Elon MuskがTwitterを買収しました。Twitterは何年もの間、多くの意味で大衆に素早くリーチできるデフォルトの場所でした。Elon Muskの買収で、これまで人々がTwitterで愛していたものを破壊したことで、ユーザーがより良いものを探しました。そして、市場に需要があると判断した開発者がそれを満たす製品を作ろうと動きました。

Tearing down the walled gardens

ソーシャルの未来の話の前に、分散型SNSがどういうものか理解しておくと役立ちます。既存のインターネットの仕組みと完全に異なります。一番簡単な方法は、ユーザーインターフェイスとユーザーデータの完全な分離です。異なる種類のソーシャルアプリに登録するたびに、通常はフォロイー・フォロワーの再構築が必要ですが、データを分離していることで、リストが一緒についてきます。このリストはアプリの一部ではなく、インターネットの一部であるべきという考え方です。

電子メールがこれに一番近いです。メールアプリ、プロバイダーが多数存在しますが、連絡先は引き継がれ、機能します。逆に、Facebookはこの反例です。Facebookの友達はエクスポートして他のプラットフォームで流用したりできません。

A new-old vision

ActivityPub自体は2018年1月にW3C勧告で最終的な標準となりましたが、このルーツはWeb自体に遡ります。ActivityPubの共同編集者のEvan Prodromouが語ります。

彼は15年以上分散型ソーシャルネットワークプロトコルの開発に携わってきました。何年にも渡って、SNSの一部の解放を目的としたプロトコルのパレードがおこなれてきました。OStatus/pump.io/Open Social/Pubsubhubbub/WebFinger/ActivityStreams/XMPP/RSS/OpenID。他にもたくさんあります。様々な時期に大手IT企業も取り組んだことがあります。例えば、2010年に開始して2年でサービス終了したGoogle BuzzはOStatusと互換性がありました。

このような標準は通常W3Cで管理されています。何十年もの間このようなことに取り組む「social on the web」作業グループがありました。2008年にはMarc AndreessenがOpenSocialというプロトコルの立ち上げに熱狂的に語りました。が、これはうまくいきませんでした。そして、2014年7月に「Social Web Working Group」として知られる新しいグループが招集されました。このグループは連合ソーシャルネットワーキングを理解することを明確な任務としていました。このグループは3年半に渡って議論しました。時には時間切れでActivityPubが実現しないようにも思えましたが、2018年2月のグループ終了時に、ActivityPubを含む一握りの新しいアイデアをW3Cに送りました。

今WebでActivityPubに出会ったことがあるならば、それはほぼMastodonを使用したことがあるからです。FastlyのGlitchの責任者のAnil Dashは語ります。ActivityPubにはPlxelfed (分散型Instagram) やPeerTube (分散型YouTube) など他にも成長しているプレイヤーがいくつかありますが、Mastodonが代表です。分散SNSは全体で最近1000万アカウントを超えたとされています。ただ、これはTwitterの数億、Facebookの30憶よりも桁違いに小さいです。

Mastodonはソーシャルの未来ではないかもしれませんが、Mastodonなしでは未来に辿り着けないかもしれません。Twitterを離れる準備ができているユーザーを、受け入れる準備がMastodonでできている事実は、非常に重要でした。

あなたが企業で、ソーシャルネットワーク構築の新しい場所を探している場合、2の方法があります。Mastodonのアカウントの取得と、ActivityPubと統合した独自のプラットフォームの構築 (Mastodonの自社サーバー) です。多くの企業がこの両方を選択しています。これらの開発者や企業が行っていることは、Twitterが消滅し、何億人ものユーザーの受け皿という賭けだけではありません。TikTokも禁止される可能性が高く、特定プラットフォームにオーディエンスやコンテンツを提供することが愚かなことかを人々が目を向けることです。また、Instagramの若者への悪影響など、表示コンテンツの制御ツールが必要かもしれません。ActivityPubはこれらの全てを可能にすると考えています。

1年前に分散SNSの話をすると、「Twitterに代わるものは必要ですか?」と言うでしょう。ただ、Elon MuskがTwitterを買収して多くのスタッフを解雇したことで、答えが変わってきました。ActivityPubが中心の新しい未来の定着にはキラーアプリが必要です。ただ、Mastodonが勝つかと質問すると、違うと答えます。というのも、ActivityPubが本当に流行れば、大きなものを作る必要がないからです。これまであったいくつかの支配的なプラットフォームが、何百万もの相互運用可能な小さなプラットフォームに代わります。その方がよい結果になると主張しています。

The cost of being open

ActivityPubが中心になることへの反論は、一言でいえば悪寒です。多くのソーシャルプラットフォーマーの成功の道のりはだいたい同じです。スタートアップがVCから資金を受け取り、大規模な成長に向けて投資して、市場を独占して資金を回収するというものです。ただ、Fediverseではその価値観がほとんどを許しません。Mastodon著者のEugen Rochkoが収益化が理想に反していると主張しています。また、既存のSNSの問題があり、巨大なビジネスには、他のサービスと仲良くするインセンティブがほとんどありません。Facebook/Twitter/Instagramのユーザーを乗り換えさせるのは難しいし、プラットフォームがオープンなモデルをサポートするのは不可能かもしれません。

ActivityPubの初期には大手SNSに賛同を呼びかけましたが返事はありませんでした。あったとしても、連合ソーシャルは古いアイデアで、うまくいくはずもなく、儲かるはずもない。大手SNS業者がオープンウェブとうまく付き合う理由がありませんでした。

現在Mastodonに賭ける一番の理由はMastodonが難しいからです。Mastodonを使うとActivityPubの問題点のIDの普遍性の欠落が露呈します。具体的には、参加時にサーバーを選ぶ必要があり、自分でフォロイーを見つける必要があります。また、本人認証のよいツールもないので、Fediverseの公式アカウントを探すのも困難です。こういうも内はBlueskyのようなプロトコルから学ぶ必要のあるところです。BlueskyはActivityPubのこの欠点に対応したものになっています。また、MastodonユーザーならDMが扱いにくいというでしょう。そして、ユーザーのどれだけが自分のMastodonサーバーを運営しているかを考えると、ネットワークが大きくなればなるほど、脆弱になります。例えば、MetaがActivityPubに参加して、全ユーザーがFediverseにダンプされた場合、どうなるか?

しかし、Fediverseにとってコンテンツモデレーションが最も厄介です。適切なコンテンツモデレーションがなければ、SNSは機能しません。多くの点でコンテンツモデレーションはあらゆるSNSの主要な成果物であり、この作業の分散かは、少数の大企業だけがこれをうまく行う余裕があることを意味します。ユーザーが管理する小さなコミュニティーが答えだと考える人もいますが、これが大規模にどう機能するかは誰にもわかりません。

Who wins ActivityPub?

AcvtivityPubとFediverseの一つの将来の可能性は、単一のプラットフォームがデフォルトになることです。例えば、Gmailは電子メールプロバイダーの一つでしかないが、新しいアドレスが必要なときに皆使います。例えば、Mozillaのmozilla.socialはこういうものを目指しています。ただ、この分野の有識者から聞くアドバイスは、独自ドメインの保有です。ドメイン名を使ってIDを解決すれば、Webで20年間続いてきた方法に適合するため、簡単になります。WordPressのActivityPubの対応は、個人のWebサイトがオンラインのソーシャルID全体に変えるできる点で興奮している人がいます。

ActivityPubが成長できるかどうかは、「Embrace/Extend/Extinguish」として知られるおなじみのパターンがあります。

  1. オープンプロトコルでアプリを開始し、採用簡単なため急速に成長。
  2. 新しいプラットフォーム固有機能の追加。プロトコルの機能不足に不満。
  3. プロトコルがユーザーニーズに対応できないためオープンプロトコルを放棄。

Microsoftは初期のインターネットでこれを行いました。GoogleトークはオープンなXMPPに対応しました。

理論的には、Metaのような会社が同じことをできます。FedigramやFedbookなどを始めて、多くのユーザーを獲得後、ゆっくりと締め出すことができます。ただ、今回取材した人達からはそんなことは起こらないだろうと楽観的です。その理由の一つがMastodonの影響が大きいからです。ActivityPubの未来には大きなプレイヤーがいずれ現れるでしょう。ただ、違いは誰もプラットフォームに縛られず、逆にユーザーを縛ろうとするプラットフォームがユーザーを失いことです。

このインターネットのビジョンを求めて20年近く戦った後、連合を信じていた人々はついに勝利を収めたように感じます。プラットフォームからプロトコルへの根本的な変化は、かつてない勢いで進んでいるようです。何十年物間、オープンWebはエンドポイントに遭遇してきました。SMSや電子メール、FacebookやTwitterのようなサードパーティーに引き渡されてきました。ActivityPubのような標準のおかげで、今はずっとWebであります。

そして、Elon Muskでさえ邪魔することはできません。

結論

ActivityPubを巡る複数の識者への取材をまとめた長い記事でした。ActivityPubの成立経緯と展望などがあり学ぶことの多い内容でした。個人的には、私がSNSを始めた当初に愛用していたGoogle+の前身のGoogle BuzzがOStatusと互換性があったのは知りませんでした。

SNSはコンテンツモデレーションがやはり問題になるようです。

その他に、最後の「Embrace/Extend/Extinguish」は、これまでにも起きたことで、現在だとMisskeyがこれを行いそうで危なっかしく見ています。Gmailのように、Mastodonの影響が大きく、単一のプラットフォームがデフォルトになる。今後他の営利企業が参入してきてそうなる可能性は十分あります。ただ、個人レベルではどうしようもなく、個人サーバーを運営して継続するくらいしかありません。

ここで書かれたとおりになるのか、特に大手団体の動向を見守ります。

Comments

  1. This Article was mentioned on web.gnusocial.jp

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