書評: ハロー・ワールド (講談社文庫) | Mastodonが登場する初の小説は先見の明あり

Mastodon/book
概要
  • 書名: ハロー・ワールド (講談社文庫)
  • 副題:
  • 著者: 藤井太洋
  • ISBN: 9784065228227
  • 出版: 2021-03-12
  • 読了: 2022-11-17 Thu
  • 評価: ☆3
評価

2019年頃までに出版された分散SNS関係の書籍はほぼ全て読んだつもりでした。以下の投稿で、本書の存在を知り、未読だったため読んでみました。

藤井太洋, Taiyo Fujii (taiyo@ostatus.taiyolab.com)’s status on Wednesday, 09-Nov-2022 09:42:20 JST藤井太洋, Taiyo Fujii藤井太洋, Taiyo Fujii

5年も前の記事なんだけど、紹介します。マストドン小説を書きました。

藤井太洋さんの小説「巨象の肩に乗って」が描くちょっと先のマストドン:マストドンつまみ食い日記 – ITmedia NEWS

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1707/25/news121.html

藤井太洋, Taiyo Fujii (taiyo@ostatus.taiyolab.com)’s status on Wednesday, 09-Nov-2022 11:31:15 JST藤井太洋, Taiyo Fujii藤井太洋, Taiyo Fujii

おそらく世界初のMastodonが登場する小説となります。

2018年10月に単行本として刊行された同名書籍 (『ハロー・ワールド』(藤井 太洋)|講談社BOOK倶楽部) の文庫本版となるようです。

全7章構成で、6章には日本Rubyの会代表の高橋征義による解説があります。肝心のMastodonが登場するのはp. 177の「巨象の肩に乗って」からでした。

書籍の流れは、iOS向けの広告ブロックの開発者であるITベンチャーの主人公が、このプロジェクトに興味を持った中国人とGoogle技術者とともに、プロジェクトを進めていくところから始まります。

プロジェクトを進めていくと、広告ブロックがインドネシアなどの反政府運動や盗聴・検閲防止に使われるなどという話に発展していき、検閲国家の中国がでてきます。

こうした流れの中で、「巨象の肩に乗って」が始まります。Twitterが中国に展開するというフィクションならではの話で、中国の軍門に下ったTwitterに愛想を尽かした主人公がMastodonサーバーを始めて、さらに検閲防止のために通信の暗号化を進めたところ、ユーザー数が爆発。AWSの請求金額も膨れ上がり、資金繰りとして企業への寄付を募ります。

その中で、通信の暗号化が警察に目をつけられ、国外に移転します。その後の章では、中国での暗号資産開発・導入の話があり、そこに主人公が開発に入るというような話だったように思います。

解説を読む限り、通信の暗号化は現実のMastodonでも課題になっているそうです。その他、分散SNSと暗号資産との連携も、「pixivの「BOOTH、pixivFANBOX、pixivリクエスト機能」での表現内容に関する利用規約変更の予告 | GNU social JP」にある通り、現在関心の高い話題であり、そういった面では、小説ながら先見の明のあるものでした。

ただ、言論の自由のためのMastodonというのは違うところです。「取材: Elon MuskのTwitter買収へのMastodon著者Eugen Rochkoの見解 | GNU social JP」にある通り、実際にはMastodonは人権擁護を重視した、Twitter以上の言論統制を望む左派的な思想の強いものだからです。

中国政府の人権侵害という面に対しては反対立場にはありますが、言論自由という立場ではないというところは、小説と現実とで違うところです。

結論

Mastodonが登場する小説でした。普段小説を読まないため、新鮮でした。内容も技術的な内容が分かる人が書いたのだろうなというようなかなり細かい話があって驚きでした。

ただ、IT技術者がソフトウェア開発を通じて世界を変えていくというのは、登場人物のハイテク企業の優秀な人材も含めて、なんともきらきらした内容で、個人的には好まない内容でした。

通信の暗号化や暗号資産との絡みは、今もつながる話題で、そういう意味では先見の明のある小説でした。

暗号資産の部分は知識があまりなくどうなのかよく理解できませんでした。ビットコインの下落やFTXの破産など、昨今は前途多難ですが、もしかしたら今後中国で導入されるなど、小説通りの世界になるかもしれません。

そういう意味では、今後のタイムカプセル・未来予知的な視点では、一つ面白い本かもしれません。

コメント

  1. かき より:

    まず誤字の指摘をします。「巨像」ではなく「巨象」です。
    僕はこの小説の名は当時から知っていましたが、恥ずかしながら今に至るまで未読です。ただ、マストドンにおける通信の暗号化は現在話題になっているようで、確か1週間ほど前にmstdn.jpの管理人Suji Yanさんが「DMの暗号化は必要か?」とアンケートのトゥートをしていました。仮にマストドンで通信の暗号化が実装されれば、暗号資産との連携も可能になるかもしれませんね。
    それから、藤井太洋さんのアカウントを最近フォローしました。何ともワールドワイドな視点からのトゥートが多く、学びがあります。一番印象に残ったのは、「有名人や政治家がマストドンに登録すると、これまで以上に誹謗中傷が書き込まれ、サーバー管理者の負担が増えるでしょう。その際は(閉鎖予定日を明らかにした上で)さっさと閉鎖しましょう。精神や人生を削ってまでサーバーを維持する必要はありません」といった内容のトゥートでした。

    • GNU social JP管理人 より:

      誤字の指摘ありがとうございました。直しました。Suji Yanのアンケートは私も目にしました。

      クライアント側の実装の問題で、そもそもDMの暗号化は必要なのかという、そもそも論の話もあって賛否両論あった記憶があります。Torを経由するとか、メールもあるので、個人的には別にいらないかなと思っています。サーバー管理者が介入できるので、本気を出されたらどのみち防止は無理でしょうし。

      著者を私もときどき参考にさせてもらっています。Mastodonの強い支持者という私の印象で、投稿内容も偏っている感じがしたので、参考にするときは注意しています。

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