法学を学んでいる者として、極めて興味深い指摘に思えます。しかし、私の勉強していることと対照して違和感を感じました。もしお時間よろしければ質問をさせていただけませんでしょうか。

まず、現在係争中のドメインブロックの件に関しては、私は特に意見を持たない旨を最初に書いておきます。つまり、以下は純粋なる法学徒としての興味から管理人様に見解をお聞きするものであって、以下の文章は「具体的に誰が悪いか」を決めるものではないという認識です。

1. 他記事における言及等を一通り読んだ上でなのですが、本記事において最終的な対象となっているのはあくまで「ドメインブロック」ということで間違いないでしょうか。以下はすべてこれを仮定しております。

2. 日本や米国が判例主義であることは確かにそのとおりですし、トランプ氏の件に関しても判例が出ていることは確かです。しかしながら、そもそもアメリカと日本の法体系には英米法・大陸法と呼ばれる違いがあるように、判例が持つ重みが全く異なります(例えば、アメリカには六法全書に相当する法律文書は存在しません)。管理人様が述べておられる主張はそれぞれをただ併記したのみであって、「仮に日本で判例を作るとしてもあまり意味をもたないのではないか」と感じています。この点いかがでしょうか。

3. Fediverseに関しては不勉強ゆえ誤りがあるのかもしれないのですが、私は「所属先サーバー」の概念は「個人に紐づく属性」ではないという認識をしております。仮に太郎さんがサーバーAとサーバーBに別々にアカウントを持っていたとして、更にまた別のサーバーCからサーバーAをドメインブロックしていたと仮定します。すなわち、サーバーCとサーバーB、サーバーAとサーバーBは通信可能だが、サーバーCとサーバーAは通信不可能であるとします。このとき、太郎さんは差別されたと言えるかどうかです。憲法における当該条文「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」をここに適用できるというのが管理人様のお考えであるというのが私の理解です。この理解はまず合っているものでしょうか。

4. この質問は(3.)の続きです。というのも、私はこの部分で違和感を覚えたのです。2点理由を挙げます。それぞれに管理人様との意見の相違が存在するため、ご意見を伺いたいです。

4-a. まず、私は太郎さんは個別には差別されていないと考えます。なぜならば、この場合差別されたのはサーバーAそのものであるためです。サーバーBは差別されておらず、太郎さんはサーバーBのアカウントを用いて仲良く話をすることができます。サーバーCにおいてサーバーBとの通信を容認していることは、太郎さんが仮にサーバーAからサーバーBに移行したとしてもそれを咎めないということを含意しますから、少なくともドメインブロックは太郎さんに対しての効力をもたないのではないかと考えます。

4-b. Fediverseにおいてのそもそもの「分散しよう」というモチベーションの源泉の一つには A Cypherpunk’s Manifesto(https://www.activism.net/cypherpunk/manifesto.html)における「privacy と secrecy の違いを自ら決定することができる」という考え方が存在すると理解しています。このことを踏まえますと、Fediverse における所属先サーバーの決定とは「信頼する先を決めること」だと解釈できます。そうしますと、我々が(3.)の例でサーバーAに対して行ったドメインブロックは「サーバーAを大局的に信頼しないこと」だと思えます。つまり、我々が検討すべきことは「ある信頼対象を信頼しないことがそのまま差別に当たるかどうか」ではないでしょうか。

(4-b.)への補足としまして、「太郎さんがサーバーAを信頼することを毀損することがドメインブロックなのだ」という考え方も可能なのですが、これは(言葉を濫用しますと)「信教の自由」の方向から考えるべきことかと考えます。これはあくまで思考実験なのですが、そう考えると本記事における主張は「信教の自由を守らないのは良くない」という至極真っ当な主張として解釈できるのです。ただし、ある宗教を邪教と考えることすらも(対外的な実力行使に出ない限りは)認められている日本における自由性からしますと、本記事におけるような違法性を訴えても阻却されかねないのではないかとも考えます。

最後になりましたが、問題提起として興味深く、また示唆的なものでもありました。どうか返信いただければと存じます。